こたつむり

宇宙戦争のこたつむりのレビュー・感想・評価

宇宙戦争(2005年製作の映画)
3.9
♪ ミンナ死んでしまった
  すべてコナゴナに吹き飛んでしまった

スピルバーグ監督が仕上げたSF超大作。
しかも、主演はトム・クルーズ。
うほ。最強の組み合わせじゃないですか。全方位に対処可能な傑作であることは確実。期待に震えちゃいますね。

…の筈なんですが、巷では評価が低いのです。
勿論、僕もそれを耳にしていたので避けていました。評価が低い=駄作が一般的なイメージですからね。

しかし、鑑賞してみて分かりました。
本作は二枚目俳優の活躍を楽しむ作品ではなく。著名な監督さんが豪華な予算を使って描き切った“この世の地獄”。それは世界最強と謳われたアメリカの軍隊が蹴散らされ、一般人の命が容易くかき消されていく現実。

これは確実にトラウマ級ですよ。
特に中盤以降の“赤黒い世界”は幼い頃に観ていたら引き摺ること間違いなし。知名度のある監督さんの選択肢にしては容赦がありません。

ただ、配慮も少しだけあるんですよね。
主人公を共感できない性格にすることで、観客を一歩引いた立ち位置に誘導しているのです。それとも監督さんは、彼が“一般的なアメリカ人”と言いたかったのでしょうか。だとしたら、かなり皮肉的ですが。

まあ、そんなわけで。
娯楽大作の皮をかぶった絶望の悪魔。
一応、商業映画っぽい配慮もありますけど、その薄っぺらさを取り間違えると大火傷します。

でも、そのことを踏まえて臨むならば。
本作は監督さんの意図を見事に表現しきった傑作。その違いは“軸”が観客側に在るのか、監督側に在るのか…ですね。

僕としては監督さんの意図を大切にしたいです。映画に限らず、創作物は一種のコミュニケーション。何を意図しているのか、を汲み取ったうえで、肯定するか否定するかの返事をすれば良いのです。確かに「お前ら、すべて死に絶えろ」的なことを言われたら、否定したくもなりますけどね…。
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