主人公が観客に向かって語りかける映画にもいろいろあるが、大部分の主人公にはイラッとさせられる。「アニー・ホール」のウディ・アレンや「ハイ・フィデリティ」のジョン・キューザックの恋愛自慢は、派手な遍歴もない僕らには嫌味でしかない。フェリスがどうとかいう映画では、学校をズル休みする手段や理由をご丁寧に解説するマシュー・ブロドリックが、映画前半僕らをイライラさせた(個人の感想です)。
さて。本作の主人公アルフィー・エルキンスもその類。幾股かけてんの?と呆れてしまうプレイボーイぶりで、「人妻は旦那に会わせようとする」とか先の展開を次々に言い当てる。男女の駆け引きには百戦錬磨ってとこだろうが、だんだんと彼の言動が人を傷つけていることが見えてくる。ガールフレンドの妊娠エピソードあたり(かなり冒頭w)から、僕はディスプレイ越しにマイケル・ケインを睨みつけていた💢、多分。なんて奴だ。
全体的には軽妙でテンポもいいし、スーツ姿の英国男子は基本的に好きだし、ポール・マッカートニーの彼女だった頃のジェーン・アッシャーも出てくるし、ソニー・ロリンズ🎷の劇伴、バート・バカラック作の主題歌なんて、僕が興味をそそられる要素は満載。
だけど、付き合ってる彼女たちに対するアルフィーの態度と言葉は、上映時間が進むにつれてだんだん許せなくなってくる。病院で同室だったハリーに「人を傷つけている」と指摘されてもどこ吹く風。そのハリーの妻リリーに手を出す始末だ。最後の中絶エピソードは観ていて辛かった。
奔放な遊び人アルフィーの言動だけ見れば、胸糞悪い映画という印象だけが残る。彼にとっては束縛されない自分を貫くことしか頭にないのだ。女好きは結構だけどリスペクトがないにも程がある。しかし、ところどころに他人に対する思いを感じて気持ちが揺らぐエピソードが挟まる。こうした場面が映画としての救いになってる。ギルダとの間に生まれた息子マルコムに対する思わぬ子煩悩ぶり、洗礼式でのマルコムの様子を陰で見る場面はちょっと切ない。リリーの処置を終えた後を見て涙する場面は印象的。金持ちのルビー(シェリー・ウィンタース好演)にはもっと若い男に走られ、映画のラストでは付き合っていた人妻に素っ気なくされる。アルフィーは生き方、いや女性への向き合い方を変えられるのか。
「007」以外のルイス・ギルバート監督作を観るのは、「フレンズ」に次いで2本目。女性にキツい言葉を投げるアルフィー君は、ロジャー・ムーア氏の爪の垢でも煎じて飲んでなさいよ、ったく。イラついたけれど、ソニー・ロリンズのサントラ盤を通勤中に聴きながら、英国男子気分を勝手に味わってる自分はなんなのさw