お豆さん

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1のお豆さんのレビュー・感想・評価

3.0
嵐の前の静けさ、だろうか。派手な謎解きやアクションの連続から一転、お尋ね者ハリーは大自然の中を転々とする。これまでの作品と比較して地味と言われる本作だが、ちょうど良い息抜きとしてエモーショナルな部分を堪能できた。みずから魔法世界から隔絶し、家族や友人の安否も知らぬまま「分霊箱」を探し続ける3人にとって、あまりに過酷な旅であったが、イギリスの美しい自然が、青春をヴォルデモートとの戦いに捧げた少年少女の心象風景として、静かに、それでいて雄弁に語っている。

ダンブルドアが残した最後の課題について、ひとり思索をめぐらすハリー。友人との衝突、そしてつかの間の幸せな瞬間。かわいい子には旅をさせよというけれど、この旅を通じてハリーは自分の指命を理解し、最後の戦いへの覚悟を固め、いよいよ最終章へと向かう。

それにしても、『不死鳥の騎士団』以降の作品すべてをデヴィッド・イェーツが監督しているのに、どれもこれもバラバラな印象がある。それぞれ1度ずつ見ただけの個人的な感想だけど、少し気になった。とはいえ、まったく同じ調子でシリーズを展開していくのも面白くないけれど。これほどまでの大作は、ピーター・ジャクソン並みの愛情と忍耐と執念とで、じっくり研究して準備して全体を見据えて制作するべきだと感じた。ただ、子どもは成長を待ってくれないから、ハリー、ロン、ハーマイオニー(それにマルフォイ!)という最高の3人を見つけてしまっては、時間との闘いだったということは簡単に想像できる。

2017. 8
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