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孤独なツバメたち 〜デカセギの子どもに生まれて〜のMoominのレビュー・感想・評価

4.5
講義内にておススメされた為、又日系人系のお話ということで鑑賞。
「出稼ぎ」という名のもと、ブラジルから日本の静岡県浜松に働きに来た青年 5 人にスポ ットライトが当てられる。彼らは日本で育ち日本で働いているが、どうにも立ちはだかる差 別や社会の偏見から自分の居場所を見つけられないでいた。そんな中 2008 年、リーマンシ ョックが日本を襲う。彼らは即日に職を失いながら、帰国か残留か。そんな重荷を更に背負ってでも歩み続ける。

インタビューをオフで使いつつ日常に密着する形の構成が多かった。自主映画の三年半 の密着という情報があったが、その中でもリーマンショックだけでなく別れ・再会などのドラマがしっかりと撮れていたし、映画を作るにおいて必要なカットを考えてそこに向けて 制作陣がしっかり準備をしていることが伝わってきた。カメラは寄るべきタイミングでし っかりと寄っていて、それが毎回調整している部分も使われていて、自分たち素人にとって は勉強になった。テロップに関して導入部分は気にならなかったものの、少ししつこい所が あるとも感じた。作中に使われていたインタビュアーの質問はほとんどがため口だった。

青年たちを撮るということ。それはこの作品において一つ強い特徴であったと感じた。そ の理由としては、何人か明らかに不安定な答えが続くからだ。数分前に言った言葉と行動が 矛盾していたり、数か月後に再訪問すると気持ちが変わっていたり。そこに観客の違和感が 生まれ、違う言い方をするとその登場人物の不安定さが観客の想像力を働かせるような構 造にも見えた。そしてもう一つ、20 代は自立する年齢でもあり、自立ができない日本の出 稼ぎ社会の構造の矛盾。結婚や就職、出産など人生の岐路に立つ彼らには、「在日」という もう一つの切っても切れない鎖があり、それに気付かされた時、作品から観客への非常に強 いメッセージを感じた。『ハーフ』でも感じていた何かの違和感。それは当事者ではない観 客への無自覚さを強く訴えると共に、差別や偏見が広がる日本社会の構造への風刺なのだ と自分は解釈した。そんな中でも彼らは決断し確実と前に進んでいた。それがどんな道であれ、歩み続ける彼らを画面に映し出すことにでさえメッセージが含まれている気がした。
映画として、あまりテロップがくどい作品が好きではないと感じた。観客の思考が字幕によ って止まってしまうからだ。どこからが説明のテロップで、どこからが観客の想像力に任せ るのかをしっかりと考えたいと思った。又、ミュージックはブラジルやブレイクダンスの演 出のせいか比較的ヒップホップな音楽がずっと使われていた。もう少し緩急をつけても面 白い気がした。構成としては前半の日本での出稼ぎの暮らし、後半は帰国してからの暮らし と心境の変化など登場人物が多くてもわかりやすい構成で、作品として見てもブラジルか らきた出稼ぎの子にしっかりと着目されていた。時代を描くのにも日本社会の粗を描くに も貴重的な映画であると感じたテーマであった。
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