昔読んだプロットの本かなんかに名前が出ていた気がする。面白かった。
──本作のタイムループの理屈。
作中ではタイムループのロジックや、それを抜け出せた理由は説明されない。
表層だけを見ていたら唐突にループから抜け出したように感じるかもしれない。
しかし思想的にはしっかり理屈が通っており、その辺りも面白かった。
リタの隣で眠り、1人で目覚めた後の主人公は、ループの中でもピアノを習ったりして自分を高め、周囲の人間に手を差し伸べることで世界をより良い場所に変えて行っていた。これはループへの対抗策だと言える。繰り返しのたびに進歩していくのなら、それはもう繰り返しではない。
その価値観が極限まで行ったのが、終盤に行われる女達による男達のオークションだ。
これは主人公の行ってきた行動を、数字を増加させていく資本主義に準えた表現だろう。
そしてここで主人公はループから解放される。主人公は彼女と一緒になれたからループから抜け出せたわけではない。主人公は資本主義的な存在になることでループから抜け出した。それによって、2人の関係も積み上がっていくことになる。
恋愛や人生を資本主義と重ねて「積み上げていくもの」としてポジティブに描いたことには、この頃の景気だったりの世情が影響してそう。この頃の世情知らないけど。
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調べてみたら、やっぱり景気は良かったみたいだ。
──好きなシーン。
ループものの映画の中ではかなり初期の頃の作品だろうけど、リタをものにするためにトライアンドエラーするシークエンスとか、既にループものの楽しい部分(テンポの良い繰り返しの面白さ)が抑えられていた。
・リタに振られまくって、逃げ出せない1日にうんざりして自殺しまくって、遂に彼女と一緒になるんだけど、また次の今日になったらそれはリセットされちゃう。
この一連の流れがめちゃくちゃ好き。
遂に一緒になれたけど、どうせループでこれはなかったことになってしまう。2人の関係が積み上がっていくことはない。
案の定1人で目覚めるシーンの切なさが良かった。
──ラブコメとしては微妙?
一個微妙だった点として、主人公がリタを好きになる過程がよく分からなかった。
「君を初めて見たとき、何かが僕の中で起こった」
というセリフがあり、これを信じるのなら一目惚れだったってことになり、当初主人公がリタに興味を示していなかったのはただのフリだったってことになるんだろう。でもその展開はあんまり好みじゃない。無条件の一目惚れってそんなに面白くないから。
それよりも、このセリフはこの時点の主人公がそう思っているだけで、初対面のときに主人公は本当にリタに興味を示していなかったが、繰り返しの中で彼女を知るうちに好きになっていったという見方の方が良い。
でもこの場合は、主人公がリタのどこに惹かれたのかがよく分からない。それに他の女と遊んでいるときに、彼女のことをリタと呼んでしまうシーンも前者の見方を推してるようで微妙だ。
──その他、細かな感想。
・MONDAYを観てるときには気付かなかったけど、社会人ループものの前例にはこれがあったか。と思ったけど、仕事はそこまで中心に据えられているわけではなかった。
・振られまくってからの
「どうしたのその顔?何かあったの?振られたから?」
「そうなんだ」
せつねー。
・1番好きなセリフは、どうでも良くなっちゃってからの
「この祭り昔は意味があった。モグラを引っ張り出して食べたんですから。みなさん、気取ってないで、食べちゃいましょう!」
"食べちゃいましょう!"の部分がめっちゃ好き。
・主役のビル・マーレイに対しては、時代によってだいぶ抱く印象が変わっている。
ゴーストバスターズのお調子者なビル・マーレイは苦手。
ウェスアンダーソンの映画に出るようになってからはなんか不憫な雰囲気が出ていて好き。
この映画だと、序盤はお調子者な感じで嫌いなビル・マーレイだったんだけど、ループで疲弊してからはかなり好きなビル・マーレイになっていた。
この映画は公開時期的にゴーストバスターズとウェスアンダーソン映画に挟まれているので、この映画が転換点だったんじゃ?とか雑なことを思ったりした。