父母ともに癌

三匹の侍の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

三匹の侍(1964年製作の映画)
3.3
苦しい農民が代官の娘を人質に年貢の軽減を訴える誘拐事件を起こし、そこへ行きがかり上協力することになった侍の話。

七人の侍と似ている映画だと思った。スケールをぐっと小さくしてるけど。
ただ、結構脚本はずさんと言うか、悲劇的なストーリーなんだけど「その悲劇、回避できるチャンスあるやろう」みたいに思う場面がいくつかあって、悲劇に必然性が感じられないのがつらいところか。
アクションも正直いまいちカッコよくない。
殺陣がなんだか上手くいってない、しびれない。
ただ、死に際は素晴らしい。死んでいく人々の表情が素晴らしくドラマチックに撮れている。
この映画で一番好きなシーンは農民三人が犬みたいに殺されていくシーン。
三者三様の死にざまなんだけど最高。ものすごく悲しい。ヒールをヒールたらしめるのに最高の効果をもたらしていたと思う。
牢屋の階段での死に際も素晴らしい。音がいい。血の落ちる音。やっぱりぞっとする。
血の表現は白黒映画のほうがうまくいっているような気がする。

役者はどう考えても長門勇が素晴らしい。全員を食っている活躍。
三枚目で、陽気で、それで結構強いけど人間的弱さもある、っていう最高に美味しい役ってのもあるけど、最高の容姿で最高の演技をしていた。
ちょっとこの人追いかけたいな、って思った。

ただラストの大立ち回りが終わった後の丹波哲郎の感じと映画の終わり方がどうも気にくわなかった。活劇っぽく終わっていきゃあいいのになんか主人公がヒロイックに叫んだり暴れたりして、ちょっとかっちょわるいな、って感じ。
黒澤明の映画の終わりかたのかっこよさにを期待してしまう。
この映画は本当に終わり方がどうしようもないな、と思った。
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