炭酸煎餅

サタデー・ナイト・フィーバーの炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

2.8
だいぶ前に一度観たんですが機会があって再見。

初めて観た時も物語としてはあんまり構成や締め方がまとまっている感じがしなくて「なんとなくな話がなんとなく終わった」ような印象を受けていたんですが、正直、今回も「お話」としての感触はあんまり変わらなかったかなー……という感想。
主人公、トニー(ジョン・トラボルタ)が感じる自分を取り巻く環境に対するままならなさ・満たされなさやモラトリアム期的なやり場のない苛立ち、また同時代の「タクシードライバー」とも通じるような、おそらく当時のアメリカ社会自体にほんのり漂っていたのであろう時代的な閉塞感みたいなものの描写はものすごくザラザラした感触を伴って伝わってきますし、「ロミオとジュリエット」を引用しつつ展開されるヒロイン・ステファニーとトニーの会話や生活環境・住居の雰囲気の違いで"河を渡っただけで全てが違う"というマンハッタンとブルックリンの差や分断感を表す描写など、アメリカン・ニュー・シネマの流れを汲むと思われる「苦味の強い社会派青春映画」としてのディティール描写のレベルはかなり高いようには感じられるんですけどね……。(にしてもトニーの元カノ?の扱いはあんまり過ぎる)
前述のステファニーとトニーの会話もまたちょっと「タクシードライバー」を連想させられるんですが、違うのがここではステファニーもトニーと同じブルックリンの出身で、実際のところ多分今彼女は"マンハッタンの住民"になろうと"なりふり構わず"必死に背伸びしている最中で、言ってる事も「これ本当に盛ってないかな……?」と思わせる空虚さがほんのりある辺り、本作を「青春残酷物語」と表現する人が居るのも納得感あったりもします。

ただまあ個人的にはやっぱり、(これも観たのはかなり前でだいぶ印象薄れてるんですが)本作リスペクトのシンガポール映画「フォーエバー・フィーバー」の方が同じビター系青春映画のドラマとしては面白かったかな……という感じでした。
炭酸煎餅

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