OASIS

ニコラのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

ニコラ(1998年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

父親への妄想を働かせる12歳の内気な少年ニコラの姿を描いたクロード・ミレール監督作。

林間学校に参加する事となった少年ニコラ。
学校のバスでは無く家の車で送り届ける事になった父親とニコラは車内で何だか気まずい雰囲気。
ニコラは父親への不信感を募らせるが、父親はニコラをただただ強く愛しその愛情が厳しさへと裏返る。
そんな父の真意が掴めないニコラが、父に殺されかけたり、逆に父を殺そうとする妄想を頻繁に繰り返しながら現実と向き合って行く。

湖周辺で起きた火事、子供を狙った臓器売買、暴行されて殺された少年の死体。
ニコラの周りでは不可解な事件が頻発し、そのどれもが父と関係していそうな繋がりを感じさせ怪しさ満点。
その自分の中の誇大化した父親像を友達のオドカンと共有した事で、ニコラやオドカンの中で父は完全に殺人鬼の様に恐れられる存在に。
怯える二人を尻目に、スラッシャームービーのような雰囲気は微塵も感じさせない現実の父との温度差が可笑しさを感じさせたり。

父と子。
離れ離れに暮らす二人の間で徐々に「心が離れて行く」という様子を文字通り表現した映像は素晴らしく、時に少年の心は投げ出され、時にバラバラに切り刻まれる。
ニコラの妄想は段々と物々しさや峻烈さを増して行くのに対し、現実では然程大した事は起きていないというギャップが思春期特有のイマジネーションの豊富さを感じさせて面白い。
子だけでは無く父もやがて精神が疲弊し、心の距離は離れて行くのに状態は似通って行くという皮肉さがなんとも切ない。

ニコラの手に結ばれたミサンガが切れて落ちる瞬間、願いが叶えられたと同時に父と子の絆も断ち切られてしまうという悲しい演出が巧みであった。
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