Satoshi

アメリカン・サイコのSatoshiのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

主演のクリスチャン・ベールがほんとに嫌味で神経質で、気持ち悪い。
吉良吉影のモデルじゃないかと思うくらい、イメージぴったり。
名刺のほんの少しのデザインで競い合うシーンが印象的な、軽薄で表面的なアメリカのエリート達が面白い。
殺すたびにちょっとずつ壊れてく主人公の演技が良い。
でも圧巻だったのはラストの展開。
殺人があったのか、なかったのか、妄想か現実かあいまいにして、
内部が崩壊しきった主人公に誰も気がつかないという乾いたラストなのかと思った。でもそれはありきたりすぎるし、腑に落ちない点も多い。
もやもやしたのでレビューサイトをあさって、ようやくこの映画のオチというかテーマがわかった。

以下ネタバレ。

誰もはっきり相手のことなんか覚えてないから、殺された人間の目撃証言が出てしまうし、アリバイのないはずの主人公のアリバイも成立してしまう。
殺害現場のマンションも、地価の下落を恐れて事件を内々に処理して、白く塗りつぶしてしまうので、大量殺人なのに公表もされない。
主人公の懸命の殺人鬼としての告白も、言われた弁護士はジョークとしか受け取っていないし、そもそも主人公を別の人と間違えてるくらい、興味を持っていない。
後半にかけて爆発していた主人公の殺害衝動をあざ笑うかのように、いつものどうでもいい見栄っ張りな世界の日常が続いて、主人公は逮捕もされない。40人も殺したのに。
主人公は、殺人という特殊な行為でさえ誰の関心も引かないことに気が付き、静かに心を殺す。
ただ一人、田舎もんの秘書が、主人公の残した殺害の手記を見ているが、あれもきっと、ストレスであんなことを書いたんだろう。トラブルになるだろうから見たことを忘れようとか、そういう無関心さに消えていくんだろうな。
たぶん、当時のアメリカのエリート達の表面的で他人に無関心な人たちに向けた強烈なブラックジョークな映画で、逮捕されない殺人鬼ってのは、滑稽で斬新だった。
Satoshi

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