改名した三島こねこ

アメリカン・サイコの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)
3.5
<概説>

ウォール街に勤務するエリートサラリーマンのパトリック。順風満帆な人生を送っていたはずの彼にはドス黒い破壊衝動が眠っていた。パトリックは今日も獲物を求めて夜を徘徊する。

<感想>

パトリックが怖いという意見はわからないでもないのですが、個人的なことを言えばかなりコミカルに感じました。レインコートだの素っ裸だの、トンチキな格好での殺戮は理にはかなっているのですが、実際絵面にするとシュールというか。
特に『悪魔のいけにえ』のパロディシーンには爆笑しましたね。伏線としてレザーフェイスが作中登場しますが、まさかここまであからさまに真似てくるとは。筋肉質でセクシーな男の尻が画面を駆け抜けていくのもまた笑いどころ。

一方で現代的な表の顔については妙にリアルでした。"勉強ができるだけのバカ"と揶揄される人々が近年益々増えてきている印象ですが、その浅はかで傲慢なところを露骨に風刺されています。名刺のデザインバトルなんて、エリート意識を満足させるだけで実益なんてさしたるものでもありますまいに。

ただパトリックのナルシズムは行動を伴っているので、そこを見せられるとただアイデンティティが薄弱と切り捨てるのも悲しいですよね。実際パトリックは日常的に自身の研鑽を重ねているのに、社会的価値観という脆いものに価値基準を縋ったせいで最期ああなったわけですから。なんだか行動だけでは確固たる自己が確立できるわけではないと指摘されているようでもあります。思考と実行が並存してこその自己というか。

一見して普通のサイコパス映画なのですが、そうやって視聴してみると現代人への警鐘とも取れる作品でした。山あり谷ありではないですが、案外万人ウケするかも。