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DISTANCE/ディスタンスのSQURのレビュー・感想・評価

DISTANCE/ディスタンス(2001年製作の映画)
4.0
テロを行った教団信者の遺族が、あるアクシデントから一晩を共にすることになる、といったかなり特殊な設定によって始まる会話劇。

「対話」がテーマになっている。

「対話」を通して他者の内部に侵入すること、その難しさと大切さ。相手を傷つけることに対する臆病さと優しさと、それによって人が「孤独」を深めていく様子が描かれる。

「それでも人は人と対話をし、繋がり、ケアしあっていかなくてはいけない」。最新作『怪物』にまで連なる是枝監督の一貫した問題意識がここにも見える。

回想シーンの挿入が非常に多く行われる映画でもある。清里から人里離れた森の奥での夜の闇の中では、おずおずと、しかし確実に理解と共感が結ばれていく。それと対比するように、過去シーンの回想はいずれも明るい日差しの中ではあるが「対話の決裂」を予期させるようなソリッドで冷めた空気がある。
その対比が、アーティスティックで美しい。

「宮沢賢治がこの後何を言いたかったかわかったんだ」というそのあとの言葉を、彼女はそれから何回思い出したことだろうか。人と人が「救われる」のは、そういったほんの「一瞬」のことなのだけれど、その一瞬に一歩を踏み出すことを選択するのは、痛いほどに難しい。
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