SQUR

月曜日のユカのSQURのレビュー・感想・評価

月曜日のユカ(1964年製作の映画)
5.0
どのくらいの知名度かなども知らず前情報ゼロの状態で観たら、あんまりにも傑作映画なので驚いた。

道徳的に際どいラインをフラフラする物語としてのバランス感覚も奇抜なんだけど、そういった目眩の感覚を掻き立て、あるいはそういった道徳観によって彩られる映像美、白黒映画でこんなに美しいと感じたことは今までになかったかもしれない。
ほとんどのシーンや演出が素晴らしい(回想シーンだけちょっとなだったけど)なかでも、例えば、導入のクラブでユカが歩いて一瞬人混みの陰に隠れて観客も姿を見失うシーンからして既に美しい。
あとは、「パパ」と寝るシーンで、ベッドのわきのラジオからワーグナーが流れてカメラが左に流れてパパが明かりを消すとカメラがベッドを通り過ぎて部屋に飾られているマリア像を中心に映す、そしてワーグナーがフェードアウトしたあともしばらく暗闇のなかにマリア像が浮かび上がっている。この一連の流れはあまりにもすごい。
細かいところだけどその後のパパの邸宅の庭で若い恋人と寝たことを告白するくだりも、告解的な感じなのかなとみていると次第に話が混乱しだしたところで(思えば映画を象徴している混乱だ)刑事の取り締まりだということが分かり次第に電車ゲームになっていくという流れも味わい深い。それから男と寝るときは例え一晩だけの相手でも本気で愛することが大切だよとお母ちゃんに教えられて実践するためフランクに声をかけに行くシーン。建物が大きく映って画面左端に2人が小さく映るカット、これも良かったな。全体的に陰が美しい。
そして一番すごいと思ったのは、結婚しようという話をしてる場面で、その話をしてる間じゅうすべてバストショットに固定で話し相手の姿とかも一切映らない。微妙な表情の変化とか手の動きとかで全部魅せている(そのときのネックレスが3人の手に移っていくのも自然ながら面白い表現だった)。このシーンほんとに息を飲むくらいだった。
あとラストの街に消えていくときのさりげなさとかも好きだなー
SQUR

SQUR