ミシンそば

街のあかりのミシンそばのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
2.9
カウリスマキ流の「不屈精神」を、粘土が如く捏ねくり回して形にした、中々に救いも、暖かみもない「敗者三部作」の三作目。

コミュ力激低で友人ゼロ、喧嘩も弱く要領も悪い警備員のコイスティネンが、謎の美女に一目惚れしてあれよあれよと強盗の片棒を担がされ、自分だけ刑務所にぶちこまれる。
同じ敗者三部作の「浮き雲」や「過去のない男」は微かに光明が見える結末だったが、本作からその展開は期待すべくもなく、陰鬱でサディスト、慇懃無礼なカウリスマキの悪いところが出てしまっていた。

せめてコイスティネンをボロ雑巾のように利用し尽くしまくったマフィアには何らかの制裁を受けてほしかったが、それすらも望めずに終わり、そもそもマフィアがコイスティネンを利用した理由も彼の女々しい性根を見抜いたからと言うわけで、コイスティネンが終始顔に出さない行き場のない憤りをこちらも嫌でも追体験させられる。
カウリスマキ作品は概ね好きだが、自分とコイスティネンの性格が割りと似ているせいで、この映画について納得をすることは出来そうにないわ。