デニロ

ナイト・オン・ザ・プラネットのデニロのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

1991年製作。脚本監督ジム・ジャームッシュ。

公開当時のウィノナ・ライダーをあまり好きじゃなかった。その理由は忘れた。とはいっても90年代の彼女の出演作は随分と観てるんだけど。で、本作のことも観ていたんだけど忘却の彼方だった。本作を再見したのは『ちょっと思い出しただけ』の中でロサンゼルス篇が挿入されていたから。え、こんな話だったっけ。

ハリウッドのキャスティング・エージェント/ジーナ・ローランズはある配役を巡って悩み多き日を過ごしています。事務所に電話すると、プロデューサーから何度も成果を報告しろと電話があったわよとの伝言に閉口して舌打ちすると、公衆電話で上司に報告し終えてやはり舌打ちした女子と目が合う。その女子に、タクシー探してるの?、と声を掛けられる。え、あなたが運転手?と、タクシー運転手/ウィノナ・ライダーに聞き返す。小柄で子どもみたいだからだろうか。ジーナ・ローランズは携帯片手に車の中で仕事を済ませようと電話をかけまくるのだが、不図、運転席で喋っているウィノナ・ライダーの仕種を目にして、いいかんがえを思いつく。プロデューサーには、面接した役者は帯に短し襷に長しと報告したけど、彼女はイケるかもと思ってしまう。何故タクシーの運転手をしているの、とジーナに聞かれて、ウィノナ・ライダーはメカニックが好きで、将来は兄さんたちのように整備工になりたいんだ。それが夢。結婚もして子どもも沢山、と煙草とチューインガムを絶やさないで表情豊かに話す彼女にジーナは興味津々。お顔をちょっと覗いてみると可愛いし。

で、ムービースターにならない、と誘うのですが、それは困る。/え、わたしに任せればあなたスターになれるのよ。わたし真剣なの。/うん、真剣なのは判ってるけど、それはわたしの人生じゃない。わたしにはわたしの計画があって、今それは順調に進んでいるのよ、分かってくれるよね。/

煙草は控えなさいよ。/Yes, ma’am そう言ってふたりは別れます。

ロサンゼルス篇だけでもわたしの人生を後悔させるのに、次のニューヨーク篇も素敵なんです。

東ドイツからやって来たヘルムートというおじさんタクシー運転手。片言の英語で、ミューヨークの道もよく知らない。肝心なことに運転が下手、というより運転免許を取得してないんじゃないかと疑わしい。誰が採用したのやら。そのタクシーに乗ったのが黒人青年ヨーヨー。ブルックリーン!ここは自由と民主主義の国なんじゃないのか!!人種差別なんかするんじゃねえ!!!タクシーよ止まれ!!!!と叫んでも通り過ぎていく。ようやく止まったタクシーの運転手がヘルムートなのでした。ブルックリンに行ってくれ、と言っても道を知らない。車は動かない。言葉もロクに通じない。ないない尽くしで困り果てて、自分で運転すると言い出す。そんなことしたらわてクビになってしまいますがな。俺が黙ってりゃ分りゃしない、と強引にハンドルを奪います。

話始めるとヘルムートの前職はサーカスのピエロ。嘘だろと言われて、赤鼻芸を見せるとヨーヨーに大ウケ。険悪だった雰囲気がすっかり和んでくるのです。途中弟の嫁さんが派手な格好で歩いている姿を見かけ、このアマ!!こんな時間にこんな格好で何しようってんだ、と車の中に入れ込んで罵りあいます。独り身のヘルムートは家族っていいなあ、と羨ましそう。彼女に美人だ美人だと言い募ると彼女もご機嫌になってくる。ようやくヘルムートのタクシーが目的地に着くと、いや、車をヨーヨーに貸しただけだけど、ヨーヨーは料金を支払います。ありがとうと料金を受け取りそのまましまい込むヘルムートに、金は大事だ、ちゃんと数えろ、と教える。

お金は必要だけど、重要じゃない。

ヘルムートはそうお礼を言うのでした。

ああ、この台詞、本作だったんだ!!

更にパリ篇に続きます。

ふたりの酔客を拾ったタクシー運転手。そのふたり、五月蠅いったりゃありゃしない。俺たちはカメルーン大使に会うようなVIPだ、お前はどこの出身だ。運転手が、コートジボーワールの出身だと答えると、何やかと騒いで馬鹿にし始める。コートジボワールの何が可笑しいんだかわたしにはさっぱり分からんのですが。運転手は、もう降りてくれ、こんなところで降ろされても困る、と押し問答になるけれど、無理矢理下ろしちゃいます。しまった、料金を貰うの忘れた、っていったって契約を全うしていないんだから料金なんて取れないでしょ。

暫らく流していると、若い盲目の女性が合図をしている。彼女なら面倒はなさそうだ。すると彼女行き先を細かく指示する。俺はプロなんだから任せろ。ここには指示に従いますって書いてあんじゃないのよ。悔し紛れに別ルートを取ると、道が違うんじゃないの?と言い返される。目が見えないって不自由だろう。俺の出身地分かるか?コートジボワールでしょ。ぎょっ。彼女が映画を観ると聞いてびっくりすると、こころで感じるのよ。セックスのとき相手の顔が見えなかったら感じないだろなんてあり得ん質問にも、セックスにタブーなんぞあるものか、その分感覚は鋭いのよ。運転手の、障がい者っていうのは、という思い込みの激しさにうんざりしている女性は、きっとこんなことを繰り返して機知に富んだ答えを手に入れたんだろう。運転手だってついさっきカメルーンから偏見に満ちた笑いものにされたばかりだというのに、女性の苛立ちには気が付かない。はい、ご注文の場所に着いたよ、メーターの49フランを見て47フランと請求する。え?48か49のはずだわ。あんたの同情はいらない。

で、さよなら気を付けて/あんたもね、と言って別れたそのすぐ後に車の衝突音と共にお前の目は節穴か!との怒声が聞こえる。ちょっと笑っちゃう女性/ベアトリス・ダルなのでした。

次が意味不明のローマ篇。

陽気な運転手は、教会関係者を乗せた途端に、懺悔をしたいと言い出す。いや、ここでは、いいじゃないですか神父さん、わたしは神父じゃない、と断るに構わず、勝手にしゃべり出す。田舎ではセックスの処理に苦労してかぼちゃを相手にしたり、でもやっぱり生き物がいいとつぶらな瞳の羊に相手にしてもらったけど、そのうちオヤジにバレて肉屋に売られてしまった、で、次は兄嫁と・・・・、と始まったところで神父さんの心臓がおかしくなって。全く意味が分かりません。

で、続くヘルシンキ篇は宗教的なんでしょうか。

三人の酔客がタクシーに乗り込む。遅刻して会社を解雇され、ローンの終わったばかりの自動車がぶっ壊れ、16歳の娘が妊娠、こいつは今日が最低の日なんだ、と運転手に話しかけ不幸比べが始まる。運転手は言う。不幸なんてどこにでもある。わたしも長年願っていた子どもを授かり喜んだのも束の間、医者から未熟児で一週間ももたぬと宣言され、赤ちゃんはいないものだと思おうとしたが3週間たっても無事だった。妻から愛情を注ぎましょう、とこころを改めると、その子は死んでしまった。嘘かまことか分からぬ話に泣き崩れる酔客。これもよく分からない。

お尻の2篇がさっぱり分からないから記憶から消えたんでしょうか。

イオンシネマ市川妙典 名作上映企画「Filmarks 90’s」 第6弾! にて
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