そーいちろー

近頃なぜかチャールストンのそーいちろーのレビュー・感想・評価

近頃なぜかチャールストン(1981年製作の映画)
3.1
ウェルメイドなブラックコメディ。風刺的であるのは岡本喜八監督自身の特質もあるが、共同脚本で主演の利重剛の影響も多分にあるだろう。

金持ちのボンボンが突然婦女暴行未遂を起こし、留置所に留め置かれる。そこで出会った不思議な老人たちは、利重剛の父親が所有する土地に「邪馬台国」という独立国を立ち上げた、としてそれぞれ閣僚役を演じる少し頭のおかしい老人たちであった。

そこから利重剛の兄や義理の母、名うての殺し屋、人情派の定年間際の刑事と若い刑事、などが入り交えつつ、根本には戦後36年経った平和な日本において、すっかり戦争の影が薄れ浮かれる日本社会への風刺、警鐘が込められたブラックコメディだった。

肉弾と同じ戦争当時と今現在の平均寿命の逸話だったり、従軍慰安婦にまつわる件などはいつも通りの岡本喜八作品と言える。

正直サスペンスチックな作りが少々安直で、現代の家族風刺、拝金主義的なものをあげつらっているのかもしれないが、少し筋書きが安直かな、と。

ラスト、田中邦衛が人知れず亡くなっている中、皆が陽気に敗戦記念日にバスで温泉旅行へ向かう様子は、秀逸。

岡本喜八監督は、戦争や争いというものを徹底的に美化せず、ただただ人の無駄死に姿を描いてくれるので、信頼が置ける。
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