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パリ、テキサスのjteaのネタバレレビュー・内容・結末

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

冒頭のキュイーンと響く弦の音。ライ・クーダーが弾くギター(スライド奏法)は荒野によく似合う。いまにも倒れそうにふらふらと歩くトラビス。よれよれのスーツにむさくるしいひげ面。なぜか赤いキャップ帽をかぶっている。

痛みやつらさ、ましてや悪をたくらむ人などひとりも登場しない。なのに、涙があふれてくる。8ミリフィルムの映像を見ながら思い出に浸る場面では、育ての親の弟夫婦(ウォルトとアン)、兄(トラビス)、もうすぐ8歳になる息子(ハンター)それぞれの思い。どの立場にも心情があふれて心がパンクしそうに。

眠れない夜。磨いた靴を几帳面に並べる。弟(ウォルト)とブーツの交換。そして、靴のサイズを比べる。息子(ハンター)の迎えに着ていく服選び。道を挟んで歩く父と息子(表情としぐさからこのうえない気持ちがあふれでている)。子ども同士の優しい会話(パパがふたりでいいね)。随所に見られる赤い色(服、車、電話…)この切り取り方はPERFECT DAYSと同じ匂いがする。

トラビスとともにジェーンを探す旅に同行するハンター。トランシーバーのアイデアにジェーンの(赤い)車の追跡と頼もしい。トラビスとの距離がいっきに縮まるのがうれしい。

見つけたジェーンの美しさ。マジックミラーの部屋での会話。ふたりの顔が重なる瞬間、お互いの思いが吐き出されます。

ラスト(ジェーン)の服が緑色だったのは信号機が赤から緑に変わったかのよう。ハンターを抱きしめるジェーンはしっかりと母の姿。

気丈に振る舞うハンターがおとなびてみえる。生きることが不器用なトラビス、ハンターを大切に思う弟夫婦、若さゆえ心がついていけなかったジェーン。誰もがハンターのことを強く思い愛している。

記憶をなくしたりと、いろいろ奇妙な行動のトラビス。ラストも謎が。また旅を続けるのか。弟夫婦の心も気がかり。ちょっぴりその後の様子をのぞいてみたい。



訂正トラビス→トラヴィス
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