KnightsofOdessa

ヨーロッパ一九五一年のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ一九五一年(1952年製作の映画)
3.0
No.247[不自然にもなんの壁にもぶち当たらない] 60点

確かに"明日から他人のために生きるわ"と誰かに言われたら狂ったのかなと思うし、勢い余った博愛主義というか隣人愛は狂気と紙一重なのかもしれない。息子を失った悲しみを埋めるため、大人の社会見学を経て、極端な隣人愛に目覚める。旦那の金を使ってバカでかい施設とか作ったり、金持ちの"貧乏人可哀想"理論のもとお説教をしたり、逆に行動しない金持ちの友人たちを説教したりなどせず、たまたま出会った家族や娼婦に寄り添ったり工場で(誰にも言わずに)働いたりと、他人に迷惑をかけないのは評価すべきなんだろう。

しかし、そこが本作品の欠点でもある。妙に地に足がついていて、理論先行の頭でっかちな意識高い系でもなければ、何かを変えようとしてもいない、究極的には彼女の自己満足が他人の満足にもつながる状態になっているのだ。これは自己犠牲とは少し違うんじゃないか。

ネタなのかマジなのか私にはよく分からないが、取り敢えず"貧しいながらも皆慎ましく生きている"という構図が過激だったように思える。悪いやつが一人もいないのはどうなのか。温室育ちが社会見学で自分のやりたいことに気がつく。となれば、必ずどこかで壁にぶち当たって、その時どうするかというのが重要になってくるし、それを乗り越えても隣人愛を信じていたら本物なんだろうけど、結局は温室の枠が広がっただけで、ぬるま湯の中での隣人愛に過ぎないんじゃないか。

まぁでも、そこまで大したことはしていないのに(一応褒めてる)"聖人"認定されるってことは、結局してほしいことってのが変な施設作ってもらったり、説教食らったりするんじゃなくて、そばに居てほしいってことなんすかね。
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