ファスビンダーがちょうどダグラス・サークに影響を受け始めた頃の作品。
とはいえそこにはダグラス・サークだけでなくエルマンノ・オルミとかジョゼフ・フォン・スタンバーグとか他にも影響を受けた監督を髣髴とさせる演出が多く見られてファスビンダーの感性がよくわかる作品となっていたが、それでいて間の取り方は他の監督には無い独特なものがあってその点も実に面白かった。(特に後半主人公が旧友と参加するシーンはとても変で堪らない)
一風変わったクローズアップやズームの使い方も面白く、しかもただ独特で面白いだけでなくエイゼンシュテイン等のサイレント時代の作品をどこか思わせる見栄の切り方がされていて、まるで台詞のついたサイレントという趣のこの作品には好感が抱けた。
ファスビンダーは大まかに分けて三つの時代に分類できると思うのだけど、初期も野心的で良いもののやはりこの中期の作品が一番自分の肌に合う。
それにしてもこの作品、もっとブレッソン作品みたく素朴な人物の話かと思ったら痴情の縺れを主に描いていたのは驚いた。