SANUKIAQUA

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還のSANUKIAQUAのレビュー・感想・評価

4.8
三部作の完結編。
いかに締めるのか。
タイトルからして、
また物語的にも悪が滅び去ることは
必然の結末となっているわけで
果たしていかに勝つのか
一体何に勝つのか
指輪は何を表しているのか
そしてどう物語を締めるのかに
興味がありました。

前作で3つに分かれた
旅の仲間は、ピピンとメリーが
アラゴルンらに合流し
2つとなる。
しかし基本的に連絡手段はなく
お互いを信じる他ない。
この物語は信頼の物語だと思う。
種族も性別も年齢も経験も関係なく
フラットに信頼し合うことの尊さ。

指輪は力の象徴。
それは単純にパワーであり
権力であり他を服従させる力。
しかしそれは醜く、精神も肉体も蝕む。
普通のホビットの1人であった
スメアゴルがゴラムになったように
フロドもそのようになりつつあった。
本作の最初とクライマックスが
重なりあってしまった。

権力を持たない側から
持つ側になってから
人が変わってしまう人は少なからずいる。
しかしアラゴルンが
王位についたあとの言葉や
ホビットたちに対する振る舞いは
正反対のものだった。

指輪の誘惑から辛くも逃れたフロドが
PTSDのように生きる力を取り戻せず
安らぎを求めた姿はどこか
フォースのダークサイドに落ちながら
息子に救われたアナキン・スカイウォーカー
を思わせた。
指輪の旅から戻ったフロドが
旅立ちの船に乗り振り返った時
元の生気ある表情を取り戻していたのは
ホッとした反面哀しかった。

実際の世の中もこれくらい
善と悪がはっきりしていたら
戦いやすいのかもしれない。

本当に撃ち勝つべきは
己の中の弱い心、なのでしょう。

なお、劇場で見ていて
一番心を震えたのは
戦闘シーンではなく
サムがフロドを抱えて
滅びの山を登るシーンです。
SANUKIAQUA

SANUKIAQUA