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女系家族のyoko45のレビュー・感想・評価

女系家族(1963年製作の映画)
4.5
 登場人物たちの思惑と駆け引きがとても面白いです。これはフィルマークスにあらすじを入れてほしい。
 嘉蔵:大阪は船場、矢島商店、三代女系家族の当主(つまり婿養子)、妻に先立たれ、三人の娘を残して死去。
 藤代(京マチ子):矢島家長女。わがまま、出戻り。嘉蔵の遺言で不動産を相続することに。納得できず踊りの師匠芳三郎に何かと相談。
 千寿(鳳八千代):矢島家次女。出戻り長女藤代への不満。婿養子の夫と暖簾をつぐ気満々。遺言で受け継ぐ商店、それとは別に株式会社を作ろうと夫と画策。
 雛子(高田美和):矢島家三女。遺言で株や骨董品を受け継ぐことに。叔母の芳子が後ろ盾のようなかたちに。
 文乃(若尾文子):嘉蔵の愛人、藤代・千寿・雛子は遺言の公開でその存在を知ることに。
 宇市(中村鴈治郎):矢島商店に先代から仕える番頭、遺言執行人、くせもの。
 君枝(北林谷栄):宇市の内縁妻。

 もちろん三姉妹の関係はギクシャク、とげとげしく。でも亡き父の愛人文乃が子を宿していることを知ると叔母芳子とともに激しく堕胎を迫り、そして共同相続の山林にまで話が及びます。かたや相続執行人の宇市は自らの横領を隠して周囲を巧みに騙しながら遺産相続を決着させようと・・この宇市を演じる中村鴈治郎のとぼけた感じが面白くもあり憎たらしくもあり。さて、相続の行方はどうなるのでしょう。でも原作は山崎豊子で有名なのでご存じの方は多いかもしれません。
 最後、長女藤代(京マチ子)は呆然とした表情で亡き母の人生を想い、ひとりで強く生きろと父に教えられたような気持ちになります。執着していたものから解き放たれて前を向く、印象に残る場面です。
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