安堵霊タラコフスキー

地下水道の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

地下水道(1956年製作の映画)
4.9
長編二作目にしていきなりカンヌで評価されたワイダの出世作。

冒頭の長回しからして凄い作品で、同じく冒頭に印象的な長回しのある作品にオーソン・ウェルズの黒い罠があるけど、その一年前に長編デビュー間もないワイダが既に似た試みを行なっていたのに驚き。

その後はあまり目立った長回しは無かったけれど(それでも初期のタルコフスキーを少し短くした程度の持続性は全体的に感じられたが)、戦場の陰惨な空気作りは同時代のキューブリックに勝るものがあって、地下水道に入る前だけでも戦争映画として見事すぎる出来だった。

で、地下水道に入る前の序章の段階で既に凄いのに、いざ地下水道に入ったら視界が制御されて不気味に煙が立ち込める空間にずっと見ているとこっちまで気が滅入りそうになり、たとえ外から光が見えても希望が全く見えず、よくもこんな絶望的空間を作ってのけたと逆に感嘆してしまうくらいだった。

描かれる内容が内容だけに何度も見たくなる作品ではないけど(とはいえしばらくしたらあの映像体験を再び味わいたいと思えてきてしまうから困る)、一度見たら忘れられない強烈さと衝撃のある傑作であることは間違いなく、ワイダはよく長編二作目でこんな映画を撮り上げたものだと改めて感服する。

しかしこの作品や第七の封印、抵抗といった傑作ではなく、友情ある説得にパルムドールを授与した当時の審査員らの心境はちと理解し難いものがある。