拘泥

階段通りの人々の拘泥のレビュー・感想・評価

階段通りの人々(1994年製作の映画)
4.4
如何にも「素朴」な会話で展開する寓話で典型的なシネフィル御用達の映画という風.こういう系統の会話でやる劇を寛容に受け付けるほど俺はまだジジイじゃないはずなんだけど何故か普通に愛してるもうジジイか.A CAIXAとは箱の意で,箱と言ったらパンドラか.希望だけが残ったなどと伝説に照らすにはあまりにも空虚な中身だが,錆びた市井の神話としてはその最後聖女が生まれるのに十分である.剣の舞に行き去る通勤者を早回しなどもせず見送る美学の後,空になった階段通りでしょんべんから始まるコメディ然とした悲劇のような何か.そういえばFilmarksでシュトロツェクの似ている映画欄にこの映画がいたな.私的にゃあっちの方がエグいけどコッチぐらいのバランスの方が好きな人も多そう.豆を売る女の背後に広がるぼやけた外はあの喧騒に置き去られた人間の景色.階段を見下ろすショットも見上げるショットも階段通りとして大事なもので,真中のバレリーナの生命と,終りの焼き栗と見上げがかなりキマってる.あの赤い女1回きりはちょっと惜し過ぎな.
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