イトウモ

パリ、18区、夜。のイトウモのレビュー・感想・評価

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)
4.2
元妻に子どもを奪われる黒人青年と、老婆の連続強盗殺人犯の芸の青年であるその弟、彼が奪った金を盗んで逃げ出すリトアニア人の移民の女、の三人のミニマルな群像劇。

これといった展開もないまま散文的な即興ショットが続き、体感時間がかなり長いのだが、撮影がめちゃくちゃゴージャスでそれだけで目に愉しい。

おばちゃんだらけの空手同情、警察官に飴を配る老婆、屋上で子どもを寝かしつける夫婦、アパート上階から落下する服。

「35杯のラムショット」同様、同じところにずっと止まって生活する人たちがいかに移動するかをミニマルに撮る作家なのだと思わせる。
冒頭の爆笑するヘリコプター乗り、元彼の車に激突するカタリーナ・ゴルベワ、ホテルを気だるく歩き回る彼女の引く掃除機。ナンパから逃げ出す彼女のステップを小気味良く撮ったかと思うと、それが陳腐なポルの映画館に辿り着き爆笑に変わるというのも良かった。
ゲイのコミュニティに迷い込む一人の女と、おばちゃんたちのコミュニティに忍び込むゲイの青年という対比なのだろう。