紅の猫

立喰師列伝の紅の猫のレビュー・感想・評価

立喰師列伝(2006年製作の映画)
3.5
久しぶりに思い出して観てみた。

昭和を振り返る映画ですよと言われたら何を連想するだろうか。
懐かしの暖かい日々、成長著しい社会、戦争、文化などいろいろあるとある思う。そこに立喰師というひらたく言って無銭飲食で振り返ろうとなったら首を傾げたくなる。
それがこの映画。

無銭飲食というと身も蓋もないが、ゴト師として食べ物をせしめる人たちの話しで、立喰師のゴトを通して戦後史を語ろうという趣旨。特に社会思想史を扱っていると言えると思う。
ただ、昭和史といっても立喰師をはじめとして虚構を大胆に入れ込んでいるので昭和という時代のパロディになっている。
巧みな話芸でゴトをなしていた立喰師が社会の変化に呼応するようにそのゴトを変化させていく様は社会批評の形として面白い。
映像的にも実写をアニメーションのような連続絵で構成するアニメーションのパロディになっている。
表現もストーリーも現実のパロディとしながら昭和という時代、日本という国、社会を批評するややこしさ。

出演者が押井守と個人的な関係があるので私的でミニマムな映画なんだとわかる。
押井守が小難しいことを話しているのを聴いているのが好きな人には突き刺さる。好きな人だけには。

私は好きです。
紅の猫

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