Kaito

ドッペルゲンガーのKaitoのレビュー・感想・評価

ドッペルゲンガー(2002年製作の映画)
4.0
BSにて放送されていたものを録画し、鑑賞。黒沢清監督作品第8弾。永井(演:永作博美)はデザイン関係の仕事に就いており彼女には弟がいた。しかし彼は自殺し今は彼のドッペルゲンガーと暮らしていた。時を同じくして早崎(演:役所広司)は医療機器メーカーに勤めており意思だけで動かせる義手のついた車椅子風のロボットを製作していた。ある日彼は自身のドッペルゲンガーと出会い彼は困惑する。しかし彼は自身のドッペルゲンガーを利用しつつ生活する。そこにロボットで儲けようと企んでいる君島(演:ユースケ・サンタマリア)が現れ事態はより複雑になってゆくという話。永井と早崎は最初は別々の物語として進行する。後に2人は出会い共に行動をするようになる。永井の弟のドッペルゲンガーを早崎のドッペルゲンガーが撲殺するというのは面白い演出だ。また早崎のドッペルゲンガーは早崎本体が思っていてもしてはならないという風に抑圧していることを実行する。つまり早崎のドッペルゲンガーは早崎本体の心なのではないか。最初は早崎本体もドッペルゲンガーを利用しながらロボットの開発をしていたりしたが、やがて彼とは決別する。そして早崎本体は自身の手でドッペルゲンガーを殺す。そして彼自身がドッペルゲンガーを殺すことで過去と決別し、解放されたのである。それにより彼は彼自身をはっきり知覚できるようになっている。最後は自身のドッペルゲンガーを取り込みつつ自分自身として生きることができるようになったのではないかと考える。ロボットが崖から落ちてゆくのを離れたところから見つめているのも決別の喩えなのかもしれない。だって彼が作っていたロボットはある意味で「ドッペルゲンガー」なのだから。「決別」と「解放」。視点がなかなか面白く、趣向を凝らした作品だと感じた。
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