栗生

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーの栗生のレビュー・感想・評価

5.0
高橋留美子先生は、これは私の作品じゃないと言った作品。しかし数々のアニメ映画に影響を与え、名作と語り継がれるのか。
確かに、原作の世界観こそ滅茶苦茶にしているが、映画として素晴らしい作品だと思う。
あたるはラムちゃんに好意はあるものの、浮気を許さないラムちゃんとは一線引いており、好きという気持ちを伝えないで終わるというのがこの物語のセオリーであるが、かなりのギリギリを攻めた言動が描かれている。しかも、中には1話完結という、時間軸の進まない設定を挑発しているのかとすら思うような発言もある。
ラムちゃんとしのぶがキッチンに立って会話をするシーンも、しのぶが妙に論理的で議論をしているかのような口調で恋愛観について語るシーンもどこか違和感を感じる。顔が良いからあたるよりも面堂を選んでいるというしのぶの発言も間違ってはいないかもしれないが、原作ではそのような発言をするような現実的な女の子ではなく、ただかっこよくて、紳士的な男に惚れているだけの純粋な女の子として描かれているが、この発言を原作に結びつけてしまうと、あたるも、面堂もどちらも良いところがあり、好意はあるが、顔が良いから面倒を選んでいる計算高い女の子と言うことになってしまう。
しかし、文化祭の準備で疲れが溜まり、その上同じ日を繰り返している、さらにはラムちゃんの夢の中という設定を考えると理性を失い原作とはキャラは違うが、普段思っている事をより深く話してしまう事がむしろ自然に見えて、この作品の深みを増している。そう考えるのは俺だけかもしれないけど。
それをいうと、目を覚ましてあたるがラムちゃんにキスをしようとするシーンも原作のセオリーには反しているが、寝起きで理性を失っているのだと考えれば自然である。
これをこじつけだとするなら、ラストで友引高校が映るシーンがあるが、通常と校舎の階数が違うのである。つまり、まだ夢から醒めていないと言う事である。

このように、押井守さんはうる星やつらの裏側を本人の許可無く描いてしまったために批判を受けたのだと思うが、それがリアルで、自然に描かれているため、うる星やつらファンの自分にとってはたまらないのである。

また、アニメ界における、タイムループ映画の先駆けでもあり、数々の作品に影響を与えた素晴らしい作品と言える。
栗生

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