シネラー

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのシネラーのレビュー・感想・評価

5.0
数年前に初鑑賞し、
それ以降は年に1回以上再鑑賞する作品だ。
初鑑賞時にも思ったが、
とにかくドタバタするラブコメディ
らしからぬ壮大かつ
哲学的な異色作で大好きな映画だ。

高橋留美子の作品として
私が世代なのは、
「らんま1/2」や「犬夜叉」といった
作品だが、「うる星やつら」も
TVシリーズを頻繁に視聴する程に
好きな作品の一つである。
しかし、本作はその原作者や
「うる星やつら」のファンでも
賛否両論となった映画である。

物語は、
あたるやラムが学園祭の準備に忙しない
日々を過ごしていく中、
毎日が同じ日の繰り返しとなっている事
に気づいた日を境に、
世界が崩壊していく内容となっている。
本作は永遠に人物が成長しない
ギャグアニメや日常アニメへの
アンチテーゼが込められており、
劇中最後の登場人物の
「一生やっとれ」といった発言が
顕著にそのテーマを感じさせるだろう。
季節や時間が巡り続けるも、
永遠と学園祭の準備を繰り返す
登場人物達のループが展開されていくが、
正にループものを描いたアニメの
原点であり、
そんな中で巡り巡る物語の展開は
サスペンスやSFを感じさせる
面白味に溢れていた。
一部の演出には不気味さが感じられ、
物語のエンディング自体も
不穏な印象が残るものとなっている。
一つ一つにどのような意味があるの
か考えてみるのも良いと思える内容だ。
いつもの「うる星やつら」らしい
ギャグ要素が全く無いという訳
ではないので、そういった部分は
本作において清涼剤のように
感じられた。
その点で言うのであれば、
終盤における主人公の諸星あたるは、
ギャグアニメの主人公としての強みや
普段は隠している心情がうかがえて良かった。
加えて、劇中で東宝怪獣映画において
見覚えのある仮装が多く見受けられ、
個人的に製作側のお遊び部分が
感じられて好きな要素だった。

本作独特な異色性を感じるには、
本来の「うる星やつら」と言える
TVシリーズや原作を知る必要があると思う。
しかしながら、
本作は考察の尽きない作品である上に
面白味に溢れており、
時間の進まない日常が繰り返される
アニメ作品に対する一つの答えが
なされる素晴らしい作品であり、
「うる星やつら」の別角度の完結編
とも言える映画だ。
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