1900年代初頭のシベリア沿岸部。この地域の地図製作を目的とした調査団の隊長であるアルセーニエフと、原住民であるデルス・ウザーラ。この地で偶然出会った2人の交流と深い絆を描いた壮大なヒューマンドラマ。
日本が世界に誇る名匠の黒澤明監督がソ連で製作した作品。U-NEXTで黒澤監督作の大半は配信されていますが、本作は現在まで配信もほぼ無し。DVDレンタルメインの貴重な存在で黒澤作品をほぼ全て鑑賞してきた僕にとっても長年気になっていました。
既にデルスが亡くなっている事が示唆されるオープニング。そこから時間軸は遡り、アルセーニエフが地理調査を始める時期へ物語は移ります。調査中でのデルスとの出会い。すぐ調査団に馴染んだ彼は抜群の地理感と自然への知識と経験で一同を牽引。そしてアルセーニエフとの絆も深めます。
第一部でのクライマックス。凍った湖での凍死の危機。ここでの緊迫感は本作の見どころ。猛吹雪から逃れるために草を集めて防寒代わりにする場面は、一見地味なのに命の危険が感じ取れるシーン。これも黒澤監督らしさが出ていました。
シベリア地方の手つかずの広大な自然も大きな魅力。黒澤監督が場所に拘って撮影したのも頷けるものですし、たとえ舞台が日本国内でなくても炎の赤々しい描写や光の絶妙な映り加減で黒澤監督の作品だと分かるのも凄いこと。
最初はデルス・ウザーラ役に三船敏郎が考えられたらしいですが、今回に関しては現地の方で正解だったでしょう。ロシア人が演じるかどうかで印象はまるで別物ですし、三船敏郎のような名優でも演技力でカバーしきれない部分だと思います。
黒澤作品の中でも存在感は地味ですし、鑑賞のハードルも少し高いので見るのを忘れられやすいかもしれません。でも国は違えど黒澤節は変わらず味わえますし、2時間半があっという間。お勧めです。