ツクヨミ

ロスト・ハイウェイのツクヨミのレビュー・感想・評価

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
4.7
幻覚か夢か二重人格か.またもや無限に解釈できそうなノワール調ミステリーが永久機関のようにグルグル廻る。
デヴィッド・リンチ監督作品。追悼企画でリバイバルしてたこちらを見に行ってみた。
まず本作はミュージシャン夫妻の豪邸に謎のビデオテープが届けられることから始まるミステリーになっているが、進めば進むほど困惑する要素がてんこ盛りでまさにリンチ流カルトな作品で困惑する怪作だ。
見終わった後の感覚としてやはり"マルホランドドライブ"に近いがスタイルは全くの別物、"マルホランドドライブ"が現実と夢の2つの世界っぽいのに対し今作は現実である1つの世界を夢や幻覚っぽく見せているようにも思えるバランス。ていうか無限に解釈できるような作品でありながら思考を放棄させることなく楽しんで考察できるように仕上げてある感じ、そういうところがカルトオブカルトの成せる技な点がすごいよなリンチ。
いやはやミュージシャンが体験するホラーっぽい話から唐突に殺人事件.ファムファタールを介するノワールへと転移し終いには復讐バイオレンスへ持っていく脚本どんなってんだほんとに、見ようによっては2人の人物の物語が交錯しているようにも見えるが明らかに似通ってるというか群像劇のような時系列入れ替えマジックが機能するラストとかタランティーノの影響かとか考えてしまう。
それと今回の既成曲使いやアンジェロバダラメンティのスコアがやけにハードコアすぎて新鮮すぎ、"ローラパーマー最期の7日間"に続いてまたもやアグレッシブな印象を与えるテイストになってるのが面白いところ。ハイウェイを滑走する映像からしてかなりやってる作品であり、"ブルーベルベット"のフランクブースみたいなやばいキャラクターが活躍するバイオレンス要素が中盤とラストで爆発してて逆に笑いそうになったわ。
結局"マルホランドドライブ"系譜な何回見てもわからなくて違う解釈が出そうなとんでも作品なわけだが、圧倒的にグルグル廻る永久機関のようなラストにやられてしまったという点が先行する怪作として評価したい逸品だったな。

追記:
結局再鑑賞するしかないというか"マルホランドドライブ"と同じく引き寄せられた、こちらもやっぱり見るたびに解釈変わるし、精神分裂なのか夢なのかよくわからなくなる作品すぎて脱帽するしかない。
もはや2人の夢が交互に入れ替わってるのだろうか、多様な視点で見られるし本当に一筋縄ではいかない点は"マルホランドドライブ"を超えてるんじゃなかろうか。
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