♪ がむしゃらに ただがむしゃらの道を
人並みに いや 人一倍に
生まれつき サラブレッドじゃないから
才能は 何も無いけど
とても軽妙で皮肉的な作品でした。
本作の主人公はニコラス・ケイジが演じる武器商人。通常ならば忌み嫌われる商売ですが、軽妙な語り口とニコラス・ケイジの印象でさわり心地はまろやか。
だから、その反動で皮肉は痛烈。
それを体現しているのが彼の弟役であるジャレッド・レトですね。こちらも見事な配役です。分かりやすい形で“ある方向”に導いてくれました。
また、イーサン・ホークも同様。
主人公を追いかける捜査官を演じていますが、熱血の正義漢ではなく、偏執的な部分が見え隠れして妙味があるんですね。この辺りも配役の勝利でしょう。
それらを統括したのはアンドリュー・ニコル監督。個人的な話ですが、僕とは相性が良いのです。名作と謳われる『ガタカ』は当然のことながら、賛否両論激しい『TIME』も人生ベスト10に入れるくらいに大好き。勿論、本作も同様。
特にテンポがバッチリでした。
早すぎず遅すぎず、飽きないタイミングで次のカードが切られるので、気付けば世界観の中にどっぷりとハマっているのです。
しかも、本作の場合、主人公が“悪”側。
社会通念上、落としどころは“悲劇”になるはず…なんですが、それを感じさせないんで、余計にドキドキしちゃうんです。
但し、このあたりは賛否両論分かれそうですね。どれだけ言い訳を積み重ねても、武器を売る人は「死の商人」(自衛のために武器を持つ…なんてのは屁理屈)ですから、そんな彼に感情移入させる筆致を嫌う人がいても当然だと思います。
まあ、そんなわけで。
綺麗事を積み重ねても、日常は誰かの犠牲の上にある…それを知っているアダルトに向けた社会派娯楽作品。本作を楽しめるくらいじゃないと生きていくのはツラいと思います。善人であるのは理想ですが、泥水啜らないと大切な人は守れません。