回想シーンでご飯3杯いける

ジョゼと虎と魚たちの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
4.1
先日観た「大阪物語」が素晴らしかったので、同じく犬童一心監督、池脇千鶴主演で作られた「ジョゼと虎と魚たち」を再鑑賞。「大阪物語」から4年後の作品になる。

下半身麻痺で殆ど家の中で過ごしているジョゼ(池脇千鶴)と、彼女の世話をする中で距離を縮めていく恒夫(妻夫木聡)の恋を描いた作品で、主人公が障害者でありながら、彼女が可哀想という感覚を殆ど感じる事が無く、我がままで自由な人柄を、とても魅力的に描いている。

ストーリーそのものではなく、脚本の細やかな表現や、役者の演技を楽しむ映画でもあると思う。ここでもやはり池脇千鶴の演技が抜きん出ていて、低い声でぼそぼそと喋る関西弁の中で、言葉としては表れないものの、恒夫に対して心を開いていく様子を、実に上手く演じている。世間一般で言うところの可愛い子ちゃんではないのだろうが、その姿は強烈に愛らしく切ない。

相手役の妻夫木聡も素晴らしく、新井浩文、大倉孝二、荒川良々といった、後の映画界で活躍する事になる役者が多数出演している他、障害者に対する偽善を象徴するような、言わば悪役を演じている上野樹里が、今とは少し違うイメージで驚いた。

いくつかのシーンや台詞がいつまでも心に残る。良い意味での邦画らしさを満喫できる作品だ。