しろくま兄サキス

ジョゼと虎と魚たちのしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
4.0
【ちょっと優しくて、ちょっとスケベで、かなり好奇心で。ちょっと正義感があって、ちょっと無責任で、かなり臆病者で。そんなツネオははなもちならない。アナタもワタシもはなもちならない。】

◆妻夫木聡演じるツネオは、その世代を代表するごくごく平凡な最大公約数的人物なんだろう。一方でジョゼは、特殊な生育歴とエキセントリックな性格の持ち主。ここまでは良い。普通のボーイミーツガール。ただこのドラマに深み、というか一筋縄ではいかさぬ要素を加えているのが、彼女の身体的ディスアビリティだった。平凡ミーツ特殊。

◆ツネオとジョゼの出会いは偶然であったし、その後もツネオが逢いに行くのは単なる興味本位だったのかも知れない。でも互いに惹かれあっていく経過がとても自然。わがままを言うジョゼの言葉に困惑するツネオの表情や、男泣きに泣き崩れるラストのヘタレさ具合さえもかつての自分を観ているようで死にそう。

◆死にそうと言えば、ジョゼとのベッド(ふとん?)シーンもいろんな意味で死にそうだった。もちろんベッドシーンは照れるのが通常なんだが、健常者にとって、その道の仕事でもしているのでなければ身障者とコミュニケーションをとる機会はごく少ないはず。あまつさえセックス。心の奥底をざわざわとゆさぶるこの感情はなんだろう。罪の意識(なぜ)?、コワいもの観たさ(失礼)?神話の崩壊(意味不明)?まるで自分の人生の懐の狭さを晒しているようで、とても死にそうだった。

◆こさえるご飯、ぽつぽつと語る関西弁、ちっちゃなおっぱいさえも男が女を愛おしいとおもう要素だとしたら、それはすべての観客にも伝わったのではないか。結局のところ、この映画は素晴らしいラブストーリーだという以外ない。出会って、愛して、暮らして、別れた彼女。そういえば彼女足が悪かったな、今は元気かな?というノリなんである。

◆自分もそういうノリなのかどうか。