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サンタ・サングレ/聖なる血のペインのレビュー・感想・評価

4.5
アリ・アスター監督のホドロフスキーベストは本作なのだとか。

(※最近はアスター監督のお気に入りリストを片っ端から観ています)。

ホドロフスキーというとやはり“カルト映画”と呼ばれるものの代名詞とも言える『エル・トポ』や、更に自由度ぶっ飛び度を増した『ホーリー・マウンテン』が真骨頂であり真っ先に浮かぶ方が多いと思います。ただ、エッジ&メロウな家族劇である本作『サンタ・サングレ/聖なる血』が作劇的には一番正面切った、ストレートによく出来た作品かもしれません。


監督が初めて商業を意識して製作したと公言している通り、話の筋もしっかりとあって解りやすく、それでいてホドロフスキー監督の持つ作家性(※どギツくオーバーな色彩表現、映像表現等)が発揮されています。


主なあらすじは、サーカス団長のオルゴとブランコ乗りコンチャの間に生まれた主人公フェニックスは繊細で感受性豊かな少年。父オルゴは女たらしのサディスト。ある日父の浮気現場を発見した母は、彼の下半身に硫酸を浴びせるが、これに激怒した夫は彼女の腕を切断し、自らも喉をかっ切って果てる。この一部始終を目撃したフェニックスはショックの余り精神を病んで施設に収容され…というなかなかにハードな展開で、血みどろホラーとも化していきます。


主人公フェニックスの少年期を演じたのがホドロフスキー監督の孫であるアダン・ホドロフスキー、青年期を演じたのが息子のアクセル・ホドロフスキー。ホドロフスキ一家は皆、端正な顔立ちで才能溢れる芸術一家。また、白塗りのアルマを演じた女の子もとってもキュートでチャーミング。


親子間の凄まじい衝突と葛藤、その呪縛からの解放というテーマや、印象的なサーカス描写などはやり同時代に活躍していたフェリーニや寺山修司の作品を思い起こさせます(※テーマ的にはグザヴィエ・ドランとかも彷彿)。なにはともあれ傑作。
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