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マン・ハントのpikaのレビュー・感想・評価

マン・ハント(1941年製作の映画)
4.0
ちょいと過剰なキャラ演出が不思議とどんどん楽しくなっていってキャラを愛で楽しむ映画になっていく。観客の中にあるステレオタイプ像を引き出して、映画の中のキャラ説明を補いながらドラマが進むに連れそれをズラしていく。キャラクターに愛着を持たせてからキャラの顛末や感情で心を揺さぶってくるラングの演出が凄すぎる。今回も見事にまんまとやられた。
最初はどんな危機的な状況でも余裕たっぷりで自信満々だなと感じていたウォルター・ピジョンは、上流階級の紳士ながらも優しさと誠実さと受容力のある人物だと見えてくる。ジョーン・ベネットは中盤しか出ていないのにインパクトが強く、コロコロと表情が変わってキュートだし、ウォルター・ピジョンにどんどん惹かれて逞しくなっていく様が素敵。(娼婦設定には気づかず。単に貧乏であけすけな女の子なのかと)二人の関係が愛おしくなってドラマの主旨がどうでもよくなるほど。ってところで橋の上のシーン。。あんなシーンある!?ハリウッド映画なのに。。なんてシーンなんだ。。震えた。
数人のキャラしか出てないのに深みが凄い。

クライマックスで今までの伏線がネタになっていくラングのあるあるな演出も楽しい。
逃亡劇で場面が多様がゆえに抑揚もあって飽きが来ない。人物も場面も画面の情報を最小限に絞って見せたいものだけを映しているから集中でき、シーンの意図をダイレクトに汲める。

ラストのダイジェスト的な急展開には驚いたが、トルストイ「戦争と平和」のような、マクロをミクロで見せた表現に通じているように感じた。大きな歴史的な事象は、ミクロの個人の行動や感情が途方も無いほど影響し合って生まれるという。

洞窟の中での即席武器作りが好き。ハラハラした。「アイアンマン」の洞窟内でのアーマー作りが好きなので興奮した。
拷問後の怪我をしているシーンを影や足元で見せる演出は、見せないがゆえにどれだけ恐ろしいのかと想像力を刺激され、恐怖心も掻き立てられる。ラストでも、見せない演出が効いてる。
尻上がりに面白くなる映画だった。
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