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竜馬暗殺のrollinのレビュー・感想・評価

竜馬暗殺(1974年製作の映画)
4.7
切れる花緒。
剥がれ落ちる手配書。

不吉な兆しの数々は、呪い念仏のような凶のグルーヴを以て、ただじーっと現世を見据えながら竜馬の額を狙っておるのでござい。

16ミリフィルムを35ミリにブローアップしたことによる、『リング』の呪いのビデオみたいな生々しい映像。この仕様はまさしく『悪魔のいけにえ』。しかし光量の多い場面では、朧がかった美しく繊細な表現も見受けられるのでやんす。

中島みゆきと同じ声色の桃井かおり。薙ぎの太刀筋の美しい松田優作は無言でその存在の危険性を警告しており、澄んだ眼差しの石橋蓮司は映画が終わるまでに随分と生気を吸い取られていくのでした。

そして役者・原田芳雄。
映画全体に漂う閉塞感、死の匂いすらも身に纏い、支配する男。松田優作と同じく、長回しの殺陣の構図が滅茶苦茶カッコよろしい。特にお墓のとこ。

幕末。厭世の辻。ええじゃないかの音頭に紛れて思考を停止させる市井の人々。女装する男三人。祭りの御輿として担ぎ上げ、ええじゃないかの行列と同じく、観客も竜馬が死ぬ時を今か今かと待ち侘びる。そして既にこの世のものではない、中川梨絵演じる幡。
写真が魂を奪うというのは本当らしい。

題字/野坂昭如
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