賽の河原

ミリオンダラー・ベイビーの賽の河原のレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
4.8
手塩にかけて育てたボクサーにもタイトルマッチが近くなると逃げられてしまう不器用な年寄りフランキー。スクラップを文字通りスクラップしてしまった過去ゆえの慎重さは周囲には理解されず仕事の上で満たされない。また家族にも見放されイェーツや信仰の深淵で孤独を深めていく。
31歳の女性ボクサーのマギー。死んだ父親との記憶を糧に生きているが残された家族との関係は破綻し、経済的にも決して楽ではないなかで、ボクシングに生きがいを感じる。
ボクシングが2人を繋ぎ、家族よりも深い絆を育む物語。
終始華やかなシーンもなく、ダークな雰囲気で進んでいくんだけど、上のような筋が丁寧に描かれているので退屈しない。特に光の当て方の巧みさ。終始普段の生活に影が落ちている。
そんな彼らが真に明るい場所へ立つことが出来るのは無論リングである。
マギーがボコボコ勝ち上がっていく様は実に痛快。
そして迎えるタイトルマッチ。「イーストウッドの映画でそんなにうまいこと勝つわけねえよなぁ...」と思うがゆえにハラハラ。そしてある結末を迎える。
ラストシーン。アメリカでは論争になったそうだが、デンジャーの描写等も含めて私は猛烈な、切実なまでの「生への肯定」を感じた。フランキーも計り知れない喪失感を抱きながらも前進することを示唆するラストに涙を禁じ得ない。
賽の河原

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