Kuuta

抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-のKuutaのレビュー・感想・評価

4.1
ブレッソン初期の脱獄映画。

主人公が刑務所に連れて行かれるオープニングで、「クローズアップとカッティング」「長回しの緊張感」「音に合わせて隙を見つけて行動する」といった、この映画の基本ルールが示されている。

車から逃げ出した主人公の確保は画面の外で行われる。看守側の目線を排除しているのも特徴的。画面は主人公が知り得た情報から作られている。歩哨の足音を聞きながら物陰で待ち構える場面は屈指の名シーンだ。

他の囚人が銃殺される様子は画面に映らない。ただ、銃声は確かに聞こえる。主人公と会話をしない看守の顔は一度も出てこないが、足音は聞こえる。監獄で聞こえていたよく分からない音は、最後まで何だったのか明らかにならず、不気味に耳にこびり付く。

映画的な演出、虚飾を嫌ったブレッソンは、黙々と進む脱獄の準備と実行、同じルーティンの繰り返しを、狭い部屋での同一アングルや、視線の交差を使って描く。これだけシンプルな話を100分語れてしまうのが映画の面白さだし、その極みのような映像を終始見せてくれる手際は驚異的。全然作風は違うけれど、イーストウッドの巧さにもちょっと感覚は近いような。82点。
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