ヤンデル

ゾンビ/ディレクターズカット完全版のヤンデルのレビュー・感想・評価

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・ジョージ・A・ロメロ監督は舞台をショッピングモールにした理由として、当時はまだアメリカにショッピングモールが作られ始めた頃の時代で、「大型ショッピングモールの登場によって、ダウンタウンの小売店がなくなり、どこでも同じものを売るようになる。これは文化の衰退だ。人は何が欲しいという目的もなく、モールを徘徊する。それはまるで意思のないゾンビのようだ」としている。

・すなわち、ゾンビ映画でありながらロメロ監督は非常に政治的な思想を盛り込んでおり、例えば、ショッピングモールの屋上でテニスに興じているシーンで、ボールが落ちると下でゾンビがうごめいている。これは格差社会を表している(溝口健二「東京行進曲」の影響と言われている)。

・他にも、情報を得た者だけで逃げようとする主人公たち、世界が荒廃しているにも関わらずモノや金に執着する人達、ゾンビ化した友人をどうするか、やがてゾンビを背景として人間どうしの戦いが始まる、など示唆に富む内容となっている。

・ロメロ自身の「ディレクターズカット版」とダリオ・アルジェント監修版」が存在する。テクノを用いたスリリングな演出になっているアルジェント版と比較して、ロメロ版はショッピングモールで流れるようなのどかな音楽で終始しており、世界が静かに終わっていく様を想像させる。
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