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お嬢さん乾杯!のtakatoのレビュー・感想・評価

お嬢さん乾杯!(1949年製作の映画)
4.1
木下恵介めぐり第三弾

 話はありふれたメロドラマである。しかも終戦直後の作品ときたら、古臭くて退屈なんじゃないかと思われるかもしれないが見事な、見事な良作です。

 冒頭の松竹のマークが出るところでもう古!と思わず口にせざるをえなかった。しかし、オープニングクレジットが流れながら作中何度も使われるメインテーマが響きだすと、そのメロディーの温かさと郷愁を誘うような調べに一気に引き込まれていってしまう。その後の展開は、よくあるパターンだけどそれを輝かせるは、原節子の美しさと演技力がまず第一だろう。最初は、主人公にヒロインを見せないでじらしてじらしてから見るだに一目惚れというよくある演出だけど、原さんの輝くような美しさが非常に説得力あるものにしている。本当に白黒映画での美女ってなんであんなに輝いて見えるのか?。そして主人公の真心がわかった時の台詞無しで表情だけで気持ちを表現する上手さ!。思わずジーンときてしまった。

 そして本作の魅力の第二は木下恵介監督の演出力。カメラワークも終戦直後なのにヒッチコックみたいに凝ったアングルとかあって地味に凄いのだが、コメディーとしての面白さが随所に光る。お見合いを頑なに断ってた主人公の語気が、ヒロインを見た後だと腰砕けになるシーンの調子の絶妙さ。下手な人がやったら単にありがちがギャグというだけでかえって寒いだろう。ラストを省略するところは好き嫌い別れるだろうが、私はこうした方が良かったかなぁ~という勝手な願望はコメント欄で。
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