しろくま兄サキス

レミーのおいしいレストランのしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

2.0
【なぁ君、ネズミが作った料理、食べたいか?】
 原題の「Ratatouille」とは、ウィキペディアによるとフランス南部プロヴァンス地方、ニースの野菜煮込み料理とのこと。日本で言えば豚汁、北海道でいえば石狩汁みたいな、いずれにしてもごく普通の家庭でごく普通に食べるもので、わざわざ敢えて高級レストランに食べに行くような料理ではないらしい。フランス人のソウルフードと言ったところか。あ、そういった意味で精神的な日本人のソウルフードと言えばカレーライスみたいなものかも。綴りに”Rat(ドブネズミ)”のスペルがあることから、ブラッド・バードはこのストーリーを思いついたのかもしれない。

 相変わらず映像表現は素晴らしい。水の質感やネズミ目線での疾走感なんかはピクサーの新しいチャレンジ精神があふれていた。前作「カーズ」では乾燥していて埃っぽい米国の風景が良く描けていたのに対し、今回はヨーロッパ的なウェット感が良く出ていたと思う。

 ただ、根本的な問題として、ネズミが作った料理をどうしても食べてみたいという気分はついぞ起こらなかった。なぜなら、ネズミキャラクター単体で見た場合、それなりに擬人化デフォルメされていて気にならないのだが、それらが群れをなして動き回るところはまさにネズミの大群そのもので、ぞぞぞぞぞっと全身総毛だってしまった。ネズミ嫌いのヒトが見たら卒倒しかねないのではなかろうか。主人公リングイニが人間的にほとんど成長していかないのもけっこう不満。レミーとともに料理を作るうちに、体がそれを覚えてしまってレミーがいなくとも充分以上に料理の腕が上がっていた....、とか儂が監督ならそうするな。あと、辞めてしまった他のレストランメンバーとか潰してしまったグストーのレストランへのフォローがまるきりスルー。これでは正直楽しみきれなかったぞ。