明石です

ヘルハウスの明石ですのレビュー・感想・評価

ヘルハウス(1973年製作の映画)
2.8
かつて30人近くの人間を惨殺した殺人鬼の邸宅。彼の死後、その邸宅の調査に乗り込んだ5人の物理学者や霊能力者が、恐ろしい怪奇現象に見舞われ命を奪われていく話。監督は『ダーティメリー・クレイジーマリー』のジョン・ハフ。70年代オカルトブームの火付け役になったイギリス発の屋敷系ホラー映画。

本作は『死霊館』シリーズはもちろん、キューブリック監督の『シャイニング』やスピルバーグの『ポルターガイスト』にも影響を与えた元祖屋敷系ホラーということでかなり期待してましたが(わざわざBlu-rayを買ったくらい笑)、意外とハマれなくて残念でした。

まず、70年代当時としては名作だったんだろうな、、という雰囲気はひしひしと伝わる。怪奇現象の描写を当時の技術でここまで表現できたのは単純に凄いと思う。でもやっぱり『死霊館』等現代の屋敷系ホラーに比べると技術的に物足りなさを感じてしまった。70年代以前の映画は、技術的に未発達な部分を質の高い脚本で補ってる感じが私は好きなのですが、この映画はどちらかというと技術重視。オカルトシーンを押すために(当時としては)高品質な特殊効果が乱発される。でもそれが今見るとやっぱり古く感じちゃう。正直、技術ではなく脚本で押してほしかったというのが本音。それがまず第一のネガティブポイント。

また本作はかつてスティーブン・キングが敬愛した小説家リチャード・マシスンが脚本を務めている作品。原作の方はオカルト小説の傑作として名高いそうですが(私は未読です)、映画版の脚本にはあまりハマれませんでした。度重なるポルターガイスト現象や、霊の力により登場人物の精神が蝕まれる展開など、いまやお決まりとなった屋敷系ホラーの怪奇現象が序盤からラストまでず〜っと続いてく。でもず〜っと続くわりにはどれも淡々としてて、パンチが弱く地味といえば地味。だんだん刺激になれてきて、怖がるべきところで怖がれなくなる。そういう数撃ちゃ当たる方式じゃなくて、効果的な恐怖シーンを何個か厳選して放り込んでくれたほうが怖がれるのです。たとえば本作の前年に公開された『エクソシスト』みたいに。

やっぱり終始恐怖シーンが放り込まれ続けるよりも、序盤からラストにかけて少しずつ盛り上がっていく方が素直に楽しめるのだと思う。例えるならこの映画は、同じ性感帯をずっと刺激され続けるセックスみたい(下品な例えすみません)。決して怖くなくはないけど、刺激になれちゃって肝心なところでイケないのです。最近のホラー映画あるあるだと、前半では登場人物がいちゃついたりふざけあったりしてのほほんとした空気が続き、中盤以降突然恐怖が迫ってきて作品が引き締まっていく、、といった筋書きのホラー映画が多い気がしますが、あれって効果的だったんだなと本作を見終わって実感。ちょうどジェットコースターみたいに最初カタカタとゆっくりと上がってくから、その分落差が大きくなって余計に怖がれるのだなと。

あと私的にハマれなかったのは、劇中で描かれる人間同士のいがみ合い。論理によって物事を捉えるたちの物理学者vs幽霊の所業を信じて疑わない霊能力者、という構図で物語は進んでいきますが、まあその構図どおり分かりきった展開が続く。オカルト思考の霊能力者にイライラする物理学者と、一方で科学的な物事しか信じない物理学者を堅物と考え遠ざける霊能力者。まあそうでしょうね!という、あくまで予想の範囲内のやり取りが続くので、どうにも意外性に欠ける。

そして、たぶん最後は科学者側が勝つんだろうなと思って見てたら、その予想の範疇でかつ期待を大きく下回るラスト(この程度ではネタバレにならないのでお許しを)。え…そんなのでいいの?って思わずにはいられないほどあっさりした理由で呪いが解けちゃう。おそらく役者さんの演技には力が入っててそこは見どころなのだろうけど、あいにく私は吹替で見てしまったためそちらもよく分からず、、すみません。つねづね吹替で見た映画に関しては、正当な判断を下すのは不可能という主義でいるので、そろそろ黙ります。とりあえず、人に勧めることはなさそうな作品でした。
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