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四川のうたのkabcatのレビュー・感想・評価

四川のうた(2008年製作の映画)
3.8
かつて成都にあった機密工場にかかわっていた人々へのインタビューで構成された映画だが、実際の当事者たちに加えて、プロの俳優たちが演じる架空の人物もおり、ドキュメンタリーとフィクションの入り混じった内容になっている。俳優たちはたしかに「演技」を感じさせるものはあるが、全体から浮き出ることもなく、名も知れぬ数多くの人たちの代弁者として絵にしっくり馴染んでいる。

いつもながら思うことだが、監督の画面構成力がすばらしく、廃墟と化した工場が独自の美意識で美しい絵になっている。どのショットもすばらしくて唸りっぱなしであった。

出演している俳優のなかにジョアン・チェンが若いときの彼女に似ていた女性の役で登場しているのに驚いた。『ラスト・エンペラー』や『ツイン・ピークス』の頃と比べてアクが抜けて演技ともども自然体な姿になっていた。いつものチャオ・タオがトリを飾る女性を演じているが、最後に「お金を稼いで両親にマンションを買いたい」というセリフは脚本になく自然と出てきたそうで、監督自身も興奮したそうだ。その話を聞いて、彼女の女優としてのますますの成長ぶりを感じた。
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