Kapporiya49

闇の列車、光の旅のKapporiya49のレビュー・感想・評価

闇の列車、光の旅(2009年製作の映画)
4.0
ワクチン接種にかこつけて有休頂き、自宅鑑賞。

『ノー タイム トゥ ダイ』のフクナガ監督の全部未見のフィルモグラフィの中で、ひと際気になってたのが2009年製作の本作。

「潜入」感が半端ないし、動く列車モノ映画のよさも味わえて、ハラハラさせる逃走劇のアクションも観れて、儚い恋愛悲劇も描いて、景色も美しい。
決してエンタメ作とは言えないのに良い映画の要素がモリモリに詰まってる!という感じ。

ホンデュラスからテキサスまで1000km超?を貨物列車の屋根やら固い床やらで過ごす移民たちの生活が、ギャングや地元警察に襲われたり物投げられたり、めっちゃ過酷。
で、観た後で気づいたことだけど、観る前はなんとなくアメリカに入ってから過酷なんだろうなと想像してたけど、このアメリカ入国後についてはほとんど描かれず、移民たちはアメリカにたどり着く前にこんなに辛い経験をしまくってるのか!と気づく。
フクナガ監督はこの映画のためにリアルに難民たちと電車の屋根に乗るという経験さえしたというんだから驚き。

一方ギャングについて。
演じてるのは役者さんだし『ボーダーライン』2作のようなエグ味強すぎる暴力描写はないとは言え、ギャングの家の汚らしさと銃器だらけな環境のヤバさ加減と、そこを演者と一緒に動き回る手持ちカメラの映像がめっちゃ「潜入」感が凄い。
しかも、マラ・サルバトルーチャや18なんて、本当にある組織の名前をまんまで使っている。

ドラマ的には、2人の若い男女の主人公がリアルで素晴らしかった。
蔑まれ追われる者は、感情的になっても滅多に大声を出さないんだな、と思った。ゆえに、後に追われることにギャングのエドガーが歯を食いしばって無言で泣くシーン、女の子サイラの最後の絶叫は心に響いた。
Kapporiya49

Kapporiya49