よしまる

チャイナ・シンドロームのよしまるのレビュー・感想・評価

チャイナ・シンドローム(1979年製作の映画)
4.4
ジェーン・フォンダとマイケル・ダグラス、二世俳優同士による、親なんかに負けてられるかという気概に満ちた傑作サスペンス。

題材は原子力発電所。原発は危ないとか無意味とかを問う以前に、こんなとんでもない人の手に負えないものを生み出しながら地位や利権やらまったくしょーもない事由が茶々を入れてしまうよねという話。

主役はTVキャスターのジェーン。そしてカメラマン役がマイケルで、プロデュースを兼ねており、この後の80年代に黄金期を迎えるゴリゴリキャラは想像できない、正義感溢れる好青年を演じている。

ここに絡むキーマンが、原発所長のジャック・レモン。前回レビュー「チャンス」のピーターセラーズもそうだけれど、優れたコメディアンはやはり演技が上手い!原発の事故に狼狽えながらも冷静な判断を下す冒頭から、セリフもろくに聞こえないのにその焦りや葛藤を完璧に伝えてくれる。こりゃただ事じゃないぞと、誰もが見て取れる。

ジェーンとの仄かなロマンスを匂わせたかと思うと、愛車のBMW2002を駆るカーチェイスと見所は尽きない。壮絶なラストシーンも必見の名演だ。

そんな演技派たちによる、原発の事故を暴こうとするマスコミと隠蔽しようとする企業、さらには新原発に反対するプロ市民の皆さん、思惑が入り乱れながら事態はどんどんとエスカレートしていく。
2時間もあるとは思えないくらいに無駄なく話が進み盛り上がっていくさまは、サスペンス映画のお手本かというくらいグイグイ来てあっという間に終わる。

つい福島の吉田所長を思い浮かべてしまうジャック・レモン所長の誠実さ、タバコ吸って香水撒いて秒単位で仕事をこなすキャスターをまるでドキュメンタリーのようにリアルに見せてくれるジェーン・フォンダ、この2人が心を通わせていく過程が共感を呼び、最後までハラハラして見守るしかできなくて。
最悪なバッドエンドをさんざん思わせてくれるところもいいし、それを上回る着地にも大満足。これまた前回レビュー「チャンス」のハルアシュビー監督との「帰郷」で2度目のオスカーを手にしたジェーンはもう二世アイドルではなく完全に演技派として完成されている。それは本作ラストのリポートを観れば誰もが納得することだろう。

映画を観ていて時々「これ以上ない結末」というものに出会うことがあるけれど、まさしくそれ。

オープニングのスティーブンビショップもすごくよくて、その後意図的に一切のBGMを排してドキュメントタッチにこだわり、エンドクレジットは何と○○。
これまた深い余韻に包まれるという見事さ。あっぱれ。