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夜霧のブルースのtosyamのネタバレレビュー・内容・結末

夜霧のブルース(1963年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公の魂はもはや死んでいた。まるでポーの詩を気取ったようで恐縮だが。事実。本作。そんなダークサイドゴシックフィルムノワール。冒頭。過去を語り始める裕次郎は文字通り生きる屍なゾンビと言って良い。冷酷な復讐鬼にもなれない程のズタボロ状態なのだ。あの伝説のヤクザとまで言われた存在が。だ。伝説のヤクザから足を洗わせてくれた恋人の無残な死の時点でその魂は死んだ。語り進むにつれ裕次郎はゾンビめいてゆく。そう本作。例の主人公は登場時点から実は既に死んでいた系そのバリエーションで信頼できない語り手トリック手法を霧のように活かし切ったポリティカルミステリー。衝撃的ラスト。寒々しい二人の愛の巣の成れの果てのアパートの一室。その荒涼さは魂の失われた何処までも底無しの時代精神の空っぽさを表している。まるでイアンカーティスのジョイディヴィジョンそのものな世界観。
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