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ヤンヤン 夏の想い出のbennoのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.8
台北に暮らす少年ヤンヤンとその家族…両親、姉、祖母…それぞれの日常を描いた家族の物語…。

叔父の結婚式で始まり、家族は次第に精神的にもバラバラに…家族の危機とやがて訪れる穏やかな日常の復活を丁寧に描いていきます。

病に倒れ昏睡状態となった祖母…。
精神的な不安から新興宗教に走る母、ミンミン…。
青春時代の元カノに再会し揺れ動く父、NJ…。
友達の恋人を好きになり悩む姉、ティンティン…。

家族ひとりひとりのエピソードを交互に織り交ぜながら、人生の岐路や様々な問題を取り上げます。

映像では引きの長回しを多用…熱海のシーンでは小津監督に傾倒していることが分かる「東京物語」のシーンそのもの…。

他にも目を見張る映像は沢山あり、カフェのガラス越しに映る路上風景…オフィスから見下ろす台北の夜景…まるで宝石を散りばめたよう…。

そして印象的だったのは…夜の高速道路の高架下で恋人と語り合うティンティンを優しく包み込む信号灯の緑と赤…ふたりを照らす車のライト…。

決してドラマティックな展開がある訳でもないですが、かけがえのない"今"という時の大切さを強調します。父NJの言葉で「人生をやり直すチャンスなんて必要ない」という台詞はとても心に刺さります。

そしてとびきり輝く存在のヤンヤン!彼が画面に映し出される度にホッコリ…ヤンヤンは残念ながら主人公ではなく、純真無垢な傍観者…。

カメラに凝り始めたヤンヤンの撮る写真は…人物の後ろ姿…。「だって自分では見れないでしょ」と彼は言います。

式で始まり式で終わるストーリー。生まれくる命…失われる命…世代を越えて繰り返される人生…。家族という普遍的な共同体の縮図を映します。

ヤンヤンが祖母に語るスピーチには自然と涙がこぼれます…。自分の後ろ姿が自分の目では見えないように、どんなに歳を重ねても…自分のことや自分の人生は分からないことだらけ…だと…。


thanks to; レネリーさ~ん ✩୭⋆*✦*⋆୭*✩
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