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ヤンヤン 夏の想い出のkouのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
5.0
クーリンチェ少年殺人事件をはじめに見たときから、静かな語り口ながら、目の話すことのできない鋭さを持った素晴らしい監督だと思っていたのだが、台北ストーリー、恐怖分子とみるにしたがって、唯一無二であり、自分の中で特別な作品ばかり。本当に天才的としか言いようがない。

今作では、ヤンヤンという少年と、彼の家族の出会う悲しさや喪失感、その中でヤンヤンは大人たちとは違った目線で世界を見ていく。その目線にハッとさせられる。彼は多くを語らない。それは今作を含め、エドワード・ヤン監督の描き方にも似ている。登場人物を切り取り、そこから観客は何かを受け取る。静かだが饒舌だ。

ある一家の日常ながら、その背景には台湾の歴史がある。そして、日常にあるふとした闇のようなものも。そこに光を当てるのはヤンヤンであり、彼の最後の作文ではなぜか涙が出てくる。何とも言い難い、エドワード・ヤン監督にしか撮ることのできない作品だと思う。傑作。
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