回想シーンでご飯3杯いける

クレイマー、クレイマーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.0
冒頭で「ウーマン・リブ」という言葉が登場する。あぁ、そうか。本作が公開された1979年と言えばアメリカで巻き起こった女性解放運動「ウーマン・リブ」が最高潮に達し、国連で女子差別撤廃条約が採択された年である。本作がアカデミー賞やゴールデングローブ賞を獲得したのは、そうした背景も大きく影響しているのだろう。本作以前に、女性の自立や社会進出を背景にした本格的な映画は存在していなかったのではないだろうか。

クレイマー夫人が家庭以外での自分の居場所を求めるべく家出し、残された夫が幼い息子の面倒を見る様子をコミカルに描いた作品であるが、同時に、その結果生まれるであろう離婚や親権争いに目を向けた社会派作品でもある。

とても印象的なのは、後半の法廷シーン。2人を担当する敏腕弁護士の弁論は冴え渡り、相手方が親としてのいかに不適格なのかを暴いていく。その惨い様子に耐えかねたクレイマー夫妻は、無言で互いを労わるように見つめ合うのだ。名優ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープだからこそ成立する無言の名演。この伏線が何とも後味の良いラストシーンに繋がる。