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カラー・オブ・ハートのpikaのレビュー・感想・評価

カラー・オブ・ハート(1998年製作の映画)
4.0
面白かった!ジャケットに写るトビー・マグワイアとリース・ウィザースプーンはロマンスの相手ではなく双子の兄妹で、オタクで消極的なトビーとカースト上位で男遊び大好きなリースといういかにもステレオタイプ的なキャラクターが色のない世界に入り込み対象的に成長していくティーンのドラマ、という風体ながらも価値観の抑圧や政治的思想の対立など哲学的暗喩が込められたなかなか難しい映画だった。

とんでもファンタジーな設定がめちゃくちゃ面白い。ドラマ展開の演出と視覚的な快楽を同時に表現してしまえる映画ならではな醍醐味のある素晴らしいアイデア。表現から哲学的な比喩を読み解いたりシンプルに若者の成長を楽しんだり多角的に見れて面白い。
野暮ったい演出や上手くない描写はあれど綿密な脚本と役者の魅力で気にせず飲み込めちゃう。
最後まで徹底した娯楽映画の雰囲気で爽やかなルックと爽快なカタルシスを見せて楽しませつつ、登場人物が各々のきっかけで気付き、変化していく、そのポイントが娯楽寄りの爽快な展開ではなく価値観や思想や哲学の暗喩なのでその瞬間を単に娯楽として消化して終えられないところがちょっと難しい。クライマックスの裁判の構図がもろに政治的思想の対立構造に見えたり、主人公の目覚めポイントが『実は…』と出てくるカタルシスもなかなかヘビーなインパクトがある。
主人公と母親のオチ、テレビの中の母親のオチなどエンディングについても未だによくわからない。

トビーは主人公的なポジションでいながら狂言回しとして機能している。主人公は誰か特定の人物ではなくプレザントヴィルという街そのもので、双子という異質な存在が訪れたことで街そのものが目覚めていく展開をカタルシスにしている。
愉快で心地よく誰も傷つかないユートピアは人間的な意思や感情を抑圧、統制した世界だったとでも言うのか、快楽も性欲も知識欲も暴力も怠惰ももみくちゃに善行も悪行も意識次第というように平等に存在することが人間らしさというのか。
すんなり飲み込めない面白さ。あれはこうでこれがそうでと考える楽しさ。映画が終わってもまだ終わらない余韻も楽しい良作だった。見てよかった。
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