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フローズン・タイムのeyeのネタバレレビュー・内容・結末

フローズン・タイム(2006年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

"FROZEN TIME" (2006)

2008年 映画館大賞 第91位

と評価的には微妙ではあるが…

Filmarksでは約16000程度鑑賞され
カルト的な人気がある

ちなみ原題では"CASH BACK"

という別タイトルがついている

短編映画としてスタートしたこの作品

テーマが〈美しさと時間〉

彼女に振られた主人公ベンが
不眠症になって余った時間を
スーパーマーケットでお金に還元する

CASH BACK≠利益還元≠時間還元

の意味合いがある

主人公ベンは不眠症になったことで

時間を止める能力を得る

この"時間を止める"

という概念に

(失恋後)心の時が止まってしまう

という 概念が合わさって

"フローズン"という"凍った"

という意味を掛けて

もう一つの世界がたびたび描かれる

この凍ってしまった世界が溶けるのは

"恋をしたとき"

主人公ベンとシャロンの距離が

徐々に近づくときに

ベンの中で止まっていた時間は動き始める

この作品の面白みは

ベンが恋をする女性シャロンは
時間恐怖症(Chronophobia)

時が進むことに恐怖を覚える

対して

ベンは時を止められる能力を持つ

という何とも言えない2人の間の
奇妙なコントラストが一興でもある

そして 

この作品のキーポイント

"女性の裸体"

主人公ベンの原体験は
スウェーデン女性留学生の裸体

そこで神秘的な美の裸体を目撃する

性的な意味合いは強いものの
ベンはあくまで美の追求

周りのキャラクターは
品がない下ネタを表現している

だからこそ

芸術家ベンの清々しさが際立っている

"時間を止める力"

が表現される中で

大胆且つ繊細な描写が
劇中 芸術的な印象を残し続ける

この映画には

『静止画』
『スローモーション』

が効果的に挟まれるシーンが多々ある

監督Sean Ellisは
プロフォトグラファーであり

写真が"瞬間のアート"に対し

映画が物語を作り出す"連続のアート"

"瞬間"

を収めつつ

"映画"

という芸術に押し上げている

あたかも延長線上にあるように
他ジャンルのプロが描く観点の
素晴らしさが体験できる稀有な作品

同時に個性的なキャラクターが登場し
フットサルシーンなどコミカルな場面も多い

ラストの幻想的な雪のシーンに合わさる
メッセージがとても素晴らしい

>愛とは何か知りたかった
>今 愛はここにある
>その美しい姿は一瞬の中に息づく
>立ち止まって つかみ取ろう

監督はインタビュー内で
"美意識"について以下のように語っている

>全てのモノに美が宿っていると思うし、そうでなければならないとも思ってる。

性的な欲求を芸術で表現することを

"昇華"

と呼ばれるけど

言葉とは別に
シンプルに伝わる美術表現によって

シャロンの心を掴んだことも
人間の感情や感性の素晴らしさが
垣間見えて感動を呼ぶ

シュールなシーンやシリアスなシーン
笑いあり 切なさあり 怒りあり

だけれど

完全なハッピーエンドの映画で
清々しい気持ちになれる そんな作品
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